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読書会【菊池寛 『無名作家の日記を読む』】
更新日:2016年5月28日(土)
こんにちは!
先日の5月14日、読書会【菊池寛 『無名作家の日記を読む』】を開催しました。
講師に、尾道市立大学芸術文化学部日本文学科准教授の原卓史先生をお招きして、読書会ワークショップです。
芥川賞や直木賞の創設者であり、画家・藤田嗣治ともゆかりがあった菊池寛。
その著作のなかから、短編小説『無名作家の日記』を取り上げました。
事前に読んでいただいて、当日は感想を共有しつつ、色々なお話をしていきます。
『無名作家の日記』にはタイトルのとおり、作家を目指す青年の内面が、日記形式でつづられています。
仲間たちが成功していくなか、取り残される焦り、羨望、嫉妬、迷いなど・・・
主人公の苦悩の描写が生々しく、参加された学生さんや、作家活動をされている方を中心に、
「あるある!」と強く共感していらっしゃったようです。
そのほか「谷崎潤一郎」→「川崎純一郎」 や、「鼻」→「顔」 など、
作中の登場人物や作品の多くが、実在の作家や作品をモデルにしており、その元ネタを教えていただいたり、
私小説がブームになる前、ちょうどさきがけ位の時期だったことなど、
実際の人間関係や時代背景を知ると、見かたが広がりますね。
作者の菊池寛は、結果的に無名作家ではなくなるわけですが、
なんと、この作品が『中央公論』への初掲載=実質の文壇デビュー作だったとのこと!
文字通り“無名作家”としてデビューとは、なんとも壮大な賭けですよね。
将棋や麻雀などが好きだったそうで、根っからの勝負師だったのでしょうか。
かっこいいなあと、みなさん感心しきりでした。
その反面、このときの『中央公論』を読んで、
嫉妬しながら、「これ、俺の話じゃん!」と共感し、苦悩した、数多の“無名作家”たちを思うと切なくもあり・・・
その後の菊池は『文藝春秋』を創刊し、文学賞を制定するなどして、多くの作家を育てていったことを知ると、
いっそうこの作品につづられた苦悩が切実に感じられます。
創作に限らず、一度でも嫉妬に駆られたことがある方には、グサっとくると思いますし、
逆に、みんな同じことを考えているんだなあと、ちょっと安心するかもしれません。
ネタバレは控えさせていただきますが、ラストのくだりがまたすごいので・・・!
機会があればぜひ読んでいただきたいです。
読書というと、本来はひとりでとことん楽しめるものですが、
今回はみなさんと感想や知識を共有することで、読み方がふくらんだり、作品が何倍にも楽しめました!
また今後もこうした機会をつくっていきたいですね。
ご参加いただいた皆様、講師の原先生、どうもありがとうございました!