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ガーデントーク「花の絵と木の家具」
更新日:2014年2月5日(水)
先週のガーデントークの様子をご紹介します。
講師は浜田展也先生。高校で教鞭をとる傍ら、論文や書籍の執筆など
研究活動をずっとされています。
そんな浜田先生に、「花の絵と木の家具」と題して、展示中の絵画や家具について、
植物学の見地から解説をしていただきました!
絵画に描かれる花で、一番多いのはやはりバラですが、
先生から見ると、だいたいの作家は花はよく特徴を見ているけど、葉っぱが適当だそうです(笑)
鋸歯(きょし)と呼ばれるギザギザまでよく描いているのは、藤田嗣治やラウル・デュフィでした。
北川民次がデフォルメしたバラの葉っぱは、それだけ見るとぽってりして椿のようです。
似せて描くだけが表現ではないとしても、確かに椿っぽいですね。
さて、家具も見ていきます。
展示しているなかで多く使われている木は「ビーチ」
日本語ではブナのことですが、漢字は「橅」。 木偏に“無い”と書きます。
もともと柔らかくてスキ間が多く、歪みやすい性質で、
その昔は、家具や柱には向かないし、炭にしてもぼろぼろ崩れてしまう。
薪にするくらいしか、使い道が無かったのだそうです。
現在では、木材を歪みなく乾燥させる技術によって、利用できるようになりました。
ビーチ材の家具というのは、ある意味で科学の結晶!とも言えそうですね。
こちらは、ちょっと落ち着いた色合いのオーク。
「オーク」は、ナラやカシなど、ドングリの総称ですが、家具に使われるのは、たいてい「ナラ」のほうだそうです。
狂いが出ない、硬い、重い、などほか、隙間が多く湿気を吸う性質があり、樽にするとぐっと締まって良いのだとか。
全体にうっすら見える筋が木目で、色が濃くぽつぽつと見えるのが、導管の周りの硬い部分。
成長が遅いほど、木目が細かくて、硬い木になるのだそうです。
こちらのアンティーク調の椅子は、ソロモンマホガニーでソロモン諸島の周辺より。
テーブルは、シルバーハートでアフリカから。
家具が持つ雰囲気はヨーロッパですが、木は熱帯系。
遠くから材が運ばれて来ているのだと思うと、よりドラマチックに見えてくるから不思議です。
こちらはブナ。
広葉樹の森ならではの明るさが、家具になっても息づいているようだと浜田先生。
木の質感が部屋の中の空気まで変えてくれるような気がしますね。
絵画のほうも見ていきましょう。
バラ以外にも色んな花が描かれています。こちらは香月泰男の〈芙蓉〉。
シンプルな造形ですが、花びらの筋や、斑点の模様、つぼみの形など、よく特徴を掴んでいるとのこと。
画家の観察眼が伺えますね。
こちらは仲田好江の〈花椿〉
ふわっと、あいまいに描かれていますが、
花の真ん中に雄しべがたくさん集まっている様や、
花びらに紅白の絞りがあるように見えたり、と椿らしさがあることが分かります。
椿は冬、昆虫がいない時期に花を咲かせるので、虫より大きな鳥でも花粉をくっ付けてくれるように、雄しべをぎゅっと塊にしているのだとか。
色んな花の特徴それぞれに、それが残ってきた理由があるんですね。
最後に、浜田先生の印象的な言葉から。
それぞれに異なるデフォルメしていても、どうして皆それが「バラ」だと認識できるのか、
しかもなぜ、それを見た人が共通して「美しい」と感じるのか、
サイエンスから考えてみると、すごく謎めいているというのです。
例えば「バラ」は人間に美しいと思われ、守り育てられることで、種としてたぐいまれな発展を遂げています。
でも人間にとっては、バラを美しいと感じることにどんな理由があるのでしょう。
花を描いた、その背景の模様まで唐草だったり・・・。
花瓶にまで花が描かれていたり・・・。
絵画だけにとどまらず色んな場面で、植物や花をあらわしたものが、私たちの身の回りには溢れています。
「植物=美しい」、「バラ=美しい」とされる文化のもとに生まれて、こうしたものに囲まれて育つことで、後天的に刷り込まれているのでしょうか。
それでも、これほど脈々と受け継がれているのも不思議です。
たとえ明確な答えはないとしても、あれこれと想像して、考えを巡らせてみるのはとても楽しいですね。
今回も大変中身の濃い、楽しい時間になりました。
浜田先生、お集まりいただいたみなさま、どうもありがとうございました!