スタッフブログ展覧会
「アーティスト・ミーティング」 ー静かな物そして、見えない絵画 ー vol.1
更新日:2014年8月6日(水)
8/3(日)に「アーティスト・ミーティング」と題し、参加作家を招いたトークイベントを行いました。
村上友重さん、安田暁さん、稲川 豊さん。
聞き手に、AIRzine編集室からお二人、福山大学メディア情報文化学科の阿部さんと、鞆の津ミュージアムの学芸員の津口さん。
司会は私、なかた美術館・学芸員の国近です。
各作家に、作品について話していただく第1部と、車座トークの第2部。
休憩もはさみつつ、最終的にはなんと3時間半越え!!の長丁場になってしまいました。
それでも、さまざまな疑問が完全に解消されることはなく、むしろ聞きたいことが増えていくばかり…。
全然時間が足りなかったかなあと、またそれ以上に、司会の私が至らない点が多々あった故と反省もしきりですが…。
ご参加いただいた皆さま、ご質問&ご静聴、長時間のお付き合い、本当にありがとうございました!
さて、その記録として何回かに分けて、当日の様子を載せていきたいと思います。
まずは村上友重さんから。
村上さんが写し撮っているのは、霧や星の光など。
「見たことのない風景に惹かれる」と語る村上さん。
各地を旅して、さまざまな風景を写真に撮ってきました。
その風景からは場所を特定できるものや、具体的なモチーフが極力、削ぎ落とされています。
それは、その写真に写っているイメージだけを見て欲しいから。
例えば、霧の写真があります。
ほとんど全体が真っ白で、地面や線路などの風景の断片がうっすら見て取れます。
霧は、普段生活する上では、視界を遮るもので、ものを見えなくするものですよね。
私達はこれらの写真を見るとき、霧の中に何が写っているのか、地面や線路を探してしまいます。
でも、じっと見ていると、そこにはっきりしたものが見えないからと言って、何もないわけではなく、むしろ霧というものでいっぱいに満たされているんだと気づきます。
村上さんは、その霧そのものをじっと見つめています。
また、フィルムの写真がどんどん減っていくなかで、素材や表現媒体に拘るつもりはない。
もしかしたら、もっと他に自分に適した媒体があるかもしれない、と村上さんは言います。
サイアノタイプ(青写真)の作品は、新しい取り組みのひとつです。
展覧会のはじまりに展示した、青く小さな一枚の写真。
村上さんによる本展のための新作です。
「おのみち/太陽」と、タイトルに地名が入っていて、これまでの場所を特定しない作品とは大きく異なります。
サイアノタイプは、太陽の紫外線を利用する技法です。
その場、その場の光を、直接取り込んでいるので、そのことをタイトルに記録しておきたい、とのことでした。
深いブルーのシンプルな画面に、具体的な地名が付くことで、より思いを巡らせることができます。
全体を通して、村上さんは、そこに起こっているある現象、とりわけ光を大切にして制作されていることが分かります。
フィルムによる写真と、サイアノタイプ。
技法や完成イメージは異なりますが、どちらもイメージが丁寧に抑制されながら、多くを語りすぎず、静かな光をとどめています。
(上から2枚目:photo by Motohiro Ozaki)